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第3回 ISO 9001と「校正」前編

こんにちは。複雑に入り組んだ『校正』用語に鋭いメスを入れ、『校正』の謎や疑問をそれなりに究明する、このコラム。私が担当の井上朗です。
第3回です。誰かこのコラムを見て頂いているのでしょうか。壁に向かって話している気分です。まあ、誰が見ていなくても、知識を残すためには有効なので、今回も書いてみたいと思います。前回は、『校正』を誰が決めたのか︖についてお話しいたしました。今回は、今や一般化しているISO 9001の中で、『校正』がどのような位置付けなのか、2回に分けてお話ししたいと思います。

さて前回、ISO についてはこのように説明いたしました。

国際標準化機構(ISO)
電気・通信及び電子技術分野を除く全産業分野(鉱工業、農業、医薬品等)に関する国際規格の作成

なお、電気・通信および電子技術分野は、IEC が規格作成しています。ということで、多くの産業でISOが規格として作成されており、IEC でも同じ内容の場合、ISO/IECなどの併記となって使用されています。今や日本では一般的となっているISOですが、つい20年ほど前までは、『ISO︖何それ︖美味しいの︖』状態だったと思います。それが、今では多くの企業、工場で何らかのISO認証を取得していますし、取得していなくても、知識としてご存知の方が多いかと思います。そして、そのほとんどがISO 9000 シリーズではないでしょうか︖このISO 9000 シリーズとは、『品質マネジメントシステム』についての規格です。さらにいうと、『ISO 9001︓品質マネジメントシステム – 要求事項』だと思います。
このISO 9000シリーズは2000年(第3版)に大幅改訂され、それまでの7つほどに分かれていたものが、4つにまとめられました。特に ISO 9001 はその中でも中核をなし、品質管理では、なくてはならない物となっています。

歴史をみてみると、20世紀以降の大量生産時代では、品質を維持・管理することが重要になってきました。生産された各部品にバラツキがあっては、組み立てに支障が出てきます。各部品の特性を個別に管理するだけは成り立たなくなり、そのため、画一化・均一化された品質でバラツキをなくし、生産性を上げる必要があったのです。そこで、品質をマネジメントし、システム化し、規格化することで品質を維持管理する仕組みを作り上げました。元々はアメリカで始まった考え方で、軍の資材調達などで取り入れられました。その後、原子力関係でも取り入れられ、徐々に一般化していきました。それを決定付けたのは、先に述べた ISO 9001:2000でしょう。これは、今の(2023年12月現在)ISO 9001:2015 の基になっています。

それまでのISO 9001は1994年版での認証を取得しなければなりませんでした。これは非常に大変で、しかも誤解を恐れずに言えば大企業向けでありました。この94年版は非常に手間がかかり維持も大変で、不評でした。それでも取得したISOは、所謂ブランド的価値があり、90年代後半から00年代前半でのISO 9001認証取得ブームが起きました。ISO認証を持っていないと取引できないなどの制約も増えてきたという背景もありました。その94年度版を大幅に改訂したのが2000年版です。それまでの大企業型の品質マネジメントシステムから転換し、包括的、柔軟性、普遍性、客観性が増して、比較的、認証取得がしやすくなったと言われています。また、9001、9002、9003の3つの規格を一本化しました。その後、2008年版(第 4版)を経て、2023年12月現在の2015年版では、さらに、ISO 9001の維持管理が容易になっています。2008年版は、主に語句や用語、パラグラフの順番の変更など軽微な変更となっています。なお、ISO 9001は普遍性がありますので、それぞれの業界での実践的な規格としてセクター規格というものがあります。
例えば、IATF 16949(自動車関連)やISO 13485(医療機器・体外診断用医薬品関連)、JIS Q 9100(航空宇宙関連)などです。ついでですが、ISO 14001というのもマネジメントシステムの一つで、環境マネジメントシステムです。昨今のSDGsの流れもあり、需要も増えてきました。

ここで、ISO 9001 の歴史を纏めました。
• ISO 9001:1987 初版
9000から9004までの5シリーズのうちの一つ。『品質システム―設計、製造、据付け、付帯サービスの品質保証モデル』の規格要求事項。たった7ページ…
• ISO 90mm01:1994 第2版
• ISO 9001:2000 第3版
• ISO 9001:2008 第4版
• ISO 9001:2015 第5版
となっています。

ISO では5年に一度見直しすることになっていますので、2015 版はそろそろ改版されている頃なのですが、2020 年の TC176/SC2(ISO の技術委員会の分科会。Technical Committee 176,Sub-Committee 2の略。)で、2015 年版の改定はしないことを決定しました。ですので、次に検討するのが2025年で、検討を始めてから約8年程度かかりますから、2030年ごろまでは次の版は無い可能性があります。それだけ2015 年の『出来』が良かったのでしょう。9001 の内容の詳細については、ネット上にたくさん落ちていますので、そちらを見て頂くと良いかと思います。ここでは、測定器の校正について絞ってみてみたいと思います。

1987年の初版では、以下のように書かれています。(出典:ISO 9001:1987)

4.11 Inspection, measuring and test equipment
The supplier shall control, calibrate and maintain inspection, measuring and test equipment, whether owned by the supplier, on loan, or provided by the purchaser, to demonstrate the conformance of product to the specified requirements. Equipment shall be used in a manner which ensures that measurement uncertainty is known and is consistent with the required measurement capability.

これをJIS化したものが、JIS Z 9901:1991 です。(出典︓JIS Z 9901:1991)

4 品質システム要求事項
4.11 検査、測定及び試験装置の管理
供給者は、製品が規定要求事項に適合していることを実証するために、供給者が保有、又は借用しているものでも、購入者から提供されているものでも、検査、測定、試験の装置を管理し、校正、維持する。 これらの装置は、測定の不確かさがわかっており、必要な測定能力に合致していることを確保する方法で使用する。』

この時点で『不確かさ』が出てきていますね。『不確かさ』については、いずれお話し致しますので、ここでは省略致します。ISO では、『校正』とは何なのかは、書かれていません。VIM を参照していると思い、1984年のVIM 初版を探したのですが、見つかりませんでした。ごめんなさい。もし持っている方いらっしゃれば、見てみたいので是非教えてください。代わりに日本計量協会が 1987 年(昭和 62 年)に発行した国際計量用語集作 業委員会報告書から『校正』についての定義を見てみましょう。この報告書は VIM1 を訳したものとの事なので、VIM1と同じと思われます
(出典:国際計量用語集作業委員会報告書)

校正(calibration)
計器または測定システムによって指示される値または実量器によって表わされる値と、測定量の対応する既知の値との関係を、特定の条件の下で確定する一連の操作

所謂、値の比較ですね。注意しなければならないのは、「既知の値」と「特定の条件」です。これには、誤差の要因が含まれるので、明らかにする必要がありました。今は昔の話ですが…
JISでの『校正』は、JIS Z 8103-1978か、JIS Z 8103-1990を参照していると思われます。見てみましょう。
(出典:国際計量用語集作業委員会報告書)

4339 校正
標準器、標準試料などを用いて計測器の表す値とその真の値との関係を求めること。

1990年版もまったく同じです(番号は4344)。ずいぶんとあっさり書かれています。この『校正』は、第1回でお話ししたように、一般的な工業的な『校正』で、VIM1と同じ「標準器と比較して値を出す」というやつです。
『校正』の中に『不確かさ』は含まれていません。ISO 9001:1987では、装置として『不確かさ』がわかっていないと測定能力がないとも読めます。『校正』して、なおかつ『不確かさ』を出して使用しなさいということでしょうか。
ここでは、校正と『不確かさ』は別物としているようですね。なお、品質システム要求事項の項目に位置付けられています。

また、その管理手順としてサプライヤーに次のことを求めています。(出典:ISO 9001:1987)

The supplier shall
  1. a)identify the measurements to be made, the accuracy required and select the appropriate inspection, measuring and test equipment;
  2. b)identify, calibrate and adjust all inspection, measuring and test equipment and devices that can affect product quality at prescribed intervals, or prior to use, against certified equipment having a known valid relationship to nationally recognized standards – where no such standards exist, the basis used for calibration shall be documented;
  3. c)establish, document and maintain calibration procedures, including details of equipment type, identification number, location, frequency of checks, check method, acceptance criteria and the action to be taken when results are unsatisfactory;
  4. d)ensure that the inspection, measuring and test equipment is capable of the accuracy and precision necessary;
  5. e)identify inspection, measuring and test equipment with a suitable indicator or approved identification record to show the calibration status;
  6. f)maintain calibration records for inspection, measuring and test equipment (see 4.16);
  7. g)assess and document the validity of previous inspection and test results when inspection, measuring and test equipment is found to be out of calibration;
  8. h)ensure that the environmental conditions are suitable for the calibrations, inspections, measurements and tests being carried out;
  9. i)ensure that the handling, preservation and storage of inspection, measuring and test equipment is such that the accuracy and fitness for use is maintained;
  10. j)safeguard inspection, measuring and test facilities, including both test hardware and test software, from adjustments which would invalidate the calibration setting. Where test hardware (e.g. jigs, fixtures, templates, patterns) or test software is used as suitable forms of inspection, they shall be checked to prove that they are capable of verifying the acceptability of product prior to release for use during production and installation and shall be rechecked at prescribed intervals. The supplier shall establish the extent and frequency of such checks and shall maintain records as evidence of control (see 4.16).

JIS では以下の通りです。(出典:JIS Z 9901:1991 4.11 の続き)

供給者は次のようにする。
  1. a)測定項目及び必要精度を明らかにし、適切な検査、測定及び試験の装置を選定する
  2. b)製品の品質に影響を与えるすべての検査、測定及び試験のための装置・機器を、既定の間隔で、又は使用前に、識別し、国家標準との間に法的に有効な関係をもつ認定された装置を用いて校正し、調整する。このような標準が無い場合には、校正に用いた基準を文書化しておく。
  3. c)装置の形式、識別番号、配置場所、点検頻度、点検方法、判定基準、及び結果が不満足な場合の処置方法の詳細を含めて、校正手順を設定し、文書化し、維持する。
  4. d)検査、測定及び試験装置が、正確さ及び精密さの必要な性能を持つことを確実にする。
  5. e)検査、測定及び試験装置には、適切な標識又は承認識別記録を付けて校正状態を表示する。
  6. f)検査、測定及び試験装置の校正記録を維持する(4.16 参照)。
  7. g)検査、測定及び試験装置の校正基準からの外れが発見された場合には、過去の検査及び試験の結果の有効性を評価し、文書化する。
  8. h)校正、検査、測定及び試験の実施には、適切な環境条件を確保する。
  9. i)検査、測定及び試の装置の取扱い、保存処理及び保管には、正確さ及び使用適合性が維持されるようにする。
  10. j)試験用のハードウェア及びソフトウェアを含み、検査、測定及び試験の設備は、校正の設定を無効にするような調節ができないように保護手段を講じる。
    試験用ハードウェア(例えば、ジグ、取付具、型板、型)又は試験用ソフトウェアを検査の適切な方式として用いる場合には、製造が合格品であることを検証する能力をそれらがもつことを立証するために、それらを製造及び据付けで使用する前に点検し、また、既定の期間ごとに再点検する。供給者は、これらの点検の範囲及び頻度を確立し、また、管理の証拠としての記録を維持する(4.16 を参照)。測定データは、測定が機能的に適切なものであることを検証するために、購入者又はその代行者から要求された場合には、いつでも利用できなければならない。

とあります。ISO 9001 の次の版である ISO 9001:1994 も、1987 年版と概ね同じ内容となっています。計測器に対する管理を、細かく決めていますね。トレーサビリティについても、若干ではありますが、規定されています。また、ISO 8402:1994 という規格もありました。これは、「Quality management and quality assurance—Vocabulary」という「品質マネジメント・品質保証の用語集」でした。「calibration」は記載されていません。

実は、さらに別の ISO 規格があります。計量に限定した専門規格 ISO 10012-1:1992「測定器のため の品質保証要求事項-第 1 部:測定機器の管理システム」と ISO 10012-2:1997「測定装置品質保 証-第 2 部:測定プロセスの管理の指針」です。これらが 2003 年に統合され、ISO 10012:2003「計測 マネジメントシステム 測定プロセス及び測定機器に関する要求事項」となり、これら規格によって、測定機器のマネジメントを細かく規定されました。なぜ、ISO 10012 の話をしたかというと、次の ISO 9001:2000 で出てくるからです。この 2000 年版で、ISO 9001、ISO 9002、ISO 9003 は統合され、ISO 9001:2000 「品質マネジメントシステム-要求事項」となり、8つの品質マネジメントシステムの原則に基づいて規格化されました。また、ISO9000が「品質マネジメントシステム 基本及び用語」となり、ISO9001の用語を定義するものとなりました。この中に『校正』は出てきませんでした。詳細は省略致しますが、ISO9000 シリーズ(ファミリーともいう)はそれまでと大きく変わりました。ISO 9001 の測定機器の校正が出てくる部分だけですが、見てみましょう。
(出典:ISO 9001:2000)

7 製品実現
7.6 監視機器及び測定機器の管理
定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び測定を明確にすること。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にすること(7.2.1 参照)。
組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できることを確実にするプロセスを確立すること。
測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に関し、次の事項を満たすこと。
  1. a)定められた間隔または使用前に、国際または国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正または検証する。そのような標準が存在しない場合には、校正または検証に用いた基準を記録する。
  2. b)機器の調整をする、または必要に応じて再調整する。
  3. c)校正の状態が明確にできる識別をする。
  4. d)測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。
  5. e)取扱い、保守、保管において、損傷及び劣化しないように保護する。
    さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には、組織は、その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し、記録すること。組織は、その機器及び影響を受けた製品に 対して、適切な処置をとること。校正及び検証の結果の記録を維持すること(4.2.4 参照)。
    規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、そのコンピュータソフ トウェアによって意図した監視及び測定ができることを確認すること。この確認は、最初に使用するのに先 立って実施すること。また、必要に応じて再確認すること。

(参考)
ISO 10012-1(Quality assurance requirements for measuring equipment-Part1:Metrological confirmation system for measuring equipment)及び ISO 10012-2(Quality assurance for measuring equipment-Part2:Guidelines for control of measurement processes)を参照。

ここでは『不確かさ』の記載がなくなりました。供給者は組織へと変更されました。ここでも『校正』の意味は値の比較のみのことだと思われます。根拠となる、1993 年に発行された VIM2 の 6.11 にはこう定義されています。
(出典:VIM2:1993)

校正(calibration)[6.11]
計器又は測定システムによって指示される量の値、若しくは,実量器又は標準物質によって表される値と、標準によって実現される対応する値との間の関係を、特定の条件下で確定する一連の作業。

  1. 1校正の結果は、指示に対する測定量の値の指定、又は、指示に関する補正の決定を可能にする。
  2. 2校正はまた影響量の効果のような他の計量特性を決定できる。
  3. 3校正の結果は、校正証明書(calibration certificate)又は校正成績書(calibration report)と呼ばれる文書に記録することがある。

ISO 9001:2000 は、この定義を踏まえて規定されていると思われ、『不確かさ』は定義の中に含まれておらず、値の比較のみ規定されています。また、VIM2 を踏まえたのが JIS Z 8103:2000(計測用語)です。 日本では、ISO 9001:2000 はこの用語規格を基にしています。VIM2 とほぼ同じですが、見てみましょう。
(出典:JIS Z 8103:2000)

校正[4342]
計器又は測定系の示す値、若しくは実量器又は標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業。
備考 校正には、計器を調整して誤差を修正することは含まない。

JIS Z 8103:1990 版からは少し変化しました。所謂「調整」は、含まないことが明記されました。

ISO 9001:2000 では、はっきりとトレーサビリティは規定されています。そして、参考ですが、別の要求事 項規格である ISO 10012-1 と-2 を参照させています。このことが、この二つの規格も適用させなければならないのではないか、との誤解を一部招いたようです。ISO としては、測定機器のマネジメントと品質マネジメントの両輪でやっていきましょうという事だと思います。測定機に対するマネジメントという事ですが、品質マネジメン トとの違いをはっきりさせるため、2011 年に JIS Q 10012「計測マネジメントシステム – 測定プロセス及び 測定機器に関する要求事項」として制定されたその序文を見てみましょう。
(出典:JIS Q 10012:2011)

計測マネジメントシステムの目的は,測定機器及び測定プロセスが,組織の製品の品質に影響を与えるような不正確な結果を出すリスクを運用管理することである。計測マネジメントシステムに使用さ れる方法は,基本的な機器の検証から,測定プロセス管理のための統計的手法の適用にまで及ぶ。
(中略)
この規格において規定する要求事項に従えば,例えば,JIS Q 9001 の 7.6(監視機器及び測定機 器の管理),JIS Q 14001 の 4.5.1(監視及び測定)など,他の規格で規定されている測定及び 測定プロセス管理に対する要求事項に適合することが容易になる。

となっています。分かりにくいですが、簡単に言うと、測定プロセスの確認、測定機器の計量確認と支援プロ セスを確立しなさいよという事です。誤解を恐れずに言えば、実際の検査や計測とその測定器の定期点検などのマネジメントについての規格です。測定結果に特化した、品質と信頼性を高めるための規格と言ってもいいかもしれません。日本ではまだ第三者認証されていませんが、海外で、とりわけ中国ではかなり進んで取り入れられています。認証機関も設置され、認証取得企業には一定の特典が与えられるなど浸透し始めています(2015 年で約 4000 社が取得)。他にも台湾でも第三者認証実施され、EU、インド、オーストラリア、 ニュージーランドで国内規格化されています。企業では、エアバス社やロッキードマーチン社などがサプライヤーに規格適合を要求しているようです。日本でも第三者認証が早く始まるといいですね。

さて、話がまたそれました。ISO 9001 に戻します。要求事項に対して製品の適合性を実証する為、測定 機器を明確にし、測定プロセスを確立することを求めています。この 2000 年版で、日本では所謂 ISO ブー ムが起きました。弊社でも点検校正の依頼が爆発的に増えました。校正証明書、トレーサビリティ証明書、トレーサビリティ体系図の『校正』3 点セットを要求され、業務量が倍化していったのを覚えています。大企業が 中小企業へ、国際規格に則った品質管理を求めたのです。これによって『校正』が広く根付いていきました。この『校正』も VIM2 の意味合いの校正でした。

2008 年に ISO 9001:2008 が発行されました。内容に大幅な変更はありませんでしたが、注意すべき点がありましたので、見てみましょう。
(出典:ISO 9001:2008)

7 製品実現
7.6 監視機器及び測定機器の管理
定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び測定 を明確にしなければならない。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にしなければならない。
組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できることを確実にするプロセスを確立しなければならない。
測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に関し、次の事項を満たさなければならない。
  1. a)定められた間隔または使用前に、国際または国家計量標準にトレーサブルな計量標準に照らして校正若しくは検証、又はその両方を行う。そのような標準が存在しない場合には、校正または検証に用いた基準を記録する。(4.2.4 参照)
  2. b)機器の調整をする、または必要に応じて再調整する。
  3. c)校正の状態を明確にするために識別を行う。
  4. d)測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。
  5. e)取扱い、保守、保管において、損傷及び劣化しないように保護する。
    さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には、組織は、その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し、記録しなければならない。組織は、その機器、及び影響を受けた製品すべてに対して、適切な処置をとらなければならない。校正及び検証の結果の記録を維持しなければならない(4.2.4 参照)。
    規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、そのコンピュータソフトウェアによって意図した監視及び測定ができることを確認しなければならない。この確認は、最初に使用 するのに先立って実施しなければならない。また、必要に応じて再確認しなければならない。

ほぼ変わらないのですが、「すること」が「しなければならない」に変わっています。すこし厳しい表現です。要求事項として強調する意図でしょうか。また、ISO 10012 についての記述が削除されました。これは、先に述べた誤解が生じないようにするためです。他にも原文での“equipment”と“device”の併用問題もあったので すが、長くなりますので割愛します。『校正』の位置づけと意味は変化有りません。しかし、次の 2015 年版で大きく変わります。
と、第三回はここまでにしておきましょう。次回はこの続きから。
ではまた、次回の講釈で。

間違いや誤解があれば、ご遠慮なくご指摘ください。
akira.inoue@cosmo-kco.jp

参考文献

  • https://www.wikiwand.com/ja/ISO_9000
  • ISO 9001:1987
  • JIS Z 9901:1991 国際計量用語集作業委員会報告書 JIS Z 8103-1978
  • ISO 9001:2000
  • VIM2:1993
  • JIS Q 10012:2011
  • ISO 9001:2008
  • JIS Q 9001:2015
  • JIS Z 8103:2019
  • ISO 9000:2015
  • ISO 9001:2015 terminology-ISO9000-family
  • JIS 原案作成のための手引 【第 17 版】